"忘れないように頑張る"の、やめました。──ADHD気質の55歳社長が、記憶を"外の箱"に預けたら、夜ぐっすり眠れるようになった話
正直に言います。
僕は最近、わざと”忘れっぽい社長”になりました。
昔の僕なら、これは大問題です。でも今は、これが会社をいちばん軽く回してくれている。
前回の記事で、「タスク管理をやめて、AIを会社のGM(番頭さん)にしたら、会社が勝手に回り始めた」という話を書きました。
そのとき最後に、「タスクを全部忘れても大丈夫になる”外の箱”の作り方」を次に書きます、と予告しました。
今日はその約束を果たします。
結論から先に言いますね。
やることを覚えていられないのは、あなたの記憶力が弱いからじゃありません。頭の外に、”入れたら必ず戻ってくる箱”がないだけです。
箱の作り方のコツは、たった2つ。「役割で分ける」ことと、「戻ってくる道をつける」こと。
今日はこれを、そのままお見せします。
昔の僕は、深夜2時に飛び起きてメモを取る社長でした
まず、僕がどれだけダメだったかの話を。
僕は55歳。会計ソフト屋の跡継ぎとして生まれ、29年、会計ソフトと一緒に生きてきました。数字も段取りも、わかっているつもりでした。
なのに、恥ずかしい話——僕はずっと、頭の中に「やること」を握りしめて生きていた人間です。
パソコンで言うと、ブラウザのタブが100個、開きっぱなし。そんな頭です。
「あの請求、まだ出してない」
「明日のアポ、何時だっけ」
「あのメール、返さなきゃ」
これが、消えないんです。忘れないように、頭の奥でずっと握りしめている。
ひどいときは、深夜2時にガバッと飛び起きて、暗闇の中でスマホに「せいきゅうしょ!」とだけ打ち込んで、また倒れ込む。そんな夜が、いくつもありました。
(念のため——これはお医者さんの話ではなく、あくまで僕自身の”こういう性格クセ”とのつきあい方の話です)
僕にはADHDの傾向があります。新しいアイデアやお客さんへの提案には、自分でも怖いくらい集中できる。でもその裏返しで、地味な”覚えておく仕事”が、とにかく苦手なんです。
厄介なのは、握りしめている間じゅう、脳のエネルギーを根こそぎ持っていかれること。新しいことを考える余白なんて、残るわけがない。
僕がずっと苦しかった正体は、これでした。箱が一個しかなくて、しかもそれが自分の頭の中だった。
気づいたこと:「覚えておく」は、社長の仕事じゃなかった
長いあいだ、僕は勘違いしていました。「やることを覚えておくのも、社長の大事な仕事だ」と。だから、忘れるたびに自分を責めていました。
でも、あるとき、ふっと肩の力が抜けたんです。
社長の仕事は「覚えておくこと」じゃない。「忘れても、ちゃんと戻ってくる道を作っておくこと」だ。
覚えるのをやめていい。放り込んだものが必要なときに必ず戻ってくる道さえあれば、頭はもう握りしめなくていい。
そこで僕は、頭の中の”ごちゃ混ぜ一個箱”を、役割の違う3つの箱に分けました。分けた瞬間、嘘みたいに頭が軽くなったんです。
箱①:気持ちを吐き出す箱(手書きのノート)
モヤモヤ専用の箱です。
僕は毎朝15分、手書きのノートに、頭の中のごちゃごちゃをただ書き殴ります。もう半年、続いています。きれいにまとめない。読み返さなくていい。ただ吐き出すだけ。
大事なのは、この箱には”やること”を入れないこと。ここは、気持ちを捨てる場所です。
箱②:やることを入れる箱(ひとつだけ)
「やること」だけを入れる箱です。
紙でも、スマホのメモでも、管理システムでも、最初は何でもいい。大事なのは中身じゃありません。“やること”は、必ずこの一つの箱にしか入れない、と決めることです。
箱があちこちにあると、「どこに書いたっけ」を探すのに、また脳を使ってしまう。締め切りも一緒に添えて、この一つの箱にポイッと放り込む。
箱③:いつ・どの順でやるかを決める箱(AI=会社のGM)
判断の箱です。ここを僕はAIに任せています。
箱②にやることは溜まる。でも「今日どれをやるの?」を自分で決めようとすると、また頭が渋滞する。
だから、「並べる・順番を決める・そろそろですよと出す」役割を、まるごとAIに渡しました。僕は溜めるだけ。AIが、しかるべきタイミングで拾い上げて、目の前に出してくれる。
なぜ「安心して忘れられる」のか——ここが一番のキモです
箱を3つに分けただけでは、実はまだ安心できません。放り込んでも「本当に後で出てくるの?」と疑っていたら、また頭の中で握りしめてしまうから。
「安心して忘れる」ためには、”必ず後で拾い上げてくれる”という信頼が要るんです。これが「戻ってくる道」の正体です。
その道を作っているのが箱③のAIです。放り込んだものを、必要なときに必ず拾い上げて戻してくれる。この”拾い上げ役”がいるから、安心して手を離せる。
逆に、拾い上げてくれる仕組みのない箱は、ただの”物置”です。入れたことすら忘れて、中で腐っていく。昔の僕のメモ帳が、まさにそれでした。
この”戻ってくる道”がそろって初めて、頭は「もう握りしめなくていいんだ」と、手を離してくれます。
面白い話:一番賢いはずのAIですら、”自分の頭”を信じていない
ひとつ、面白い話を。
僕のAIには、鉄の掟が一つあります。
「会話の中身は、記憶にしない。書き残した記録だけを、真実とみなす」
つまりAIは、さっき話したことすら、自分の頭(会話の履歴)を当てにしない。大事なことは全部その場で外に書き出し、次に立ち上がったときは、それを読み直すところから始める。
これ、まさに「外の箱」そのものなんですよ。
一番忘れなさそうなAIですら、そこまで徹底している。だったら僕たち人間が、頭の中だけで全部覚えていようとするのが、そもそも無理な相談だったんです。
忘れっぽいのは、恥じゃない。外に出して、必ず戻ってくる道を持っているかどうか——差は、そこだけです。
弱点は、直さなくていい。外の箱に「預けて」いい
この仕組みを回して、いちばん変わったのは、実は”気持ち”でした。
夜、ぐっすり眠れるようになったんです。
深夜2時に飛び起きて「せいきゅうしょ!」と打ち込む夜は、もうありません。請求も、アポも、返信も、ぜんぶ外の箱に入っていて、しかるべきときにAIが出してくれると、体でわかっているから。
僕はずっと、「普通の人ができることを、なんで自分は」と、自分を叩いてきました。でも今は、こう思っています。
弱点は、根性で直すものじゃない。外の箱や仕組みに”預けて”いいものだ。
苦手な”覚えておく仕事”は、箱とAIに預ける。その代わり、自分がいちばん強い「アイデアを出す」「人に伝える」ところに、過集中を全部ぶつける。役割の設計で、長所だけが表に出るようにしただけです。
今日は、箱を”一つ”だけ作ってみてください
まとめます。
やることを覚えていられないのは、あなたの能力の問題ではありません。頭の外に、役割ごとに分けた”箱”と、”戻ってくる道”がないだけです。
気持ちの箱(吐き出すだけ・読み返さなくていい)
やることの箱(ひとつに絞る・締め切りごと放り込む)
判断の箱(いつ・どの順でやるかを決めて、そろそろですよと出す役)
そして、「安心して忘れる」には、放り込んだものを必ず拾い上げてくれる道をセットにすること。いきなり3つ全部そろえなくて大丈夫です。
今日はまず、「やることの箱」を、たった一つだけ決めてみてください。 紙でも、スマホのメモでも構いません。「やることは、必ずここにしか書かない」と決める。それだけで、頭の握力が、少しゆるみます。
僕自身が立ち直りの原点で教わったのも、「いきなり大きく変えなくていい。まず小さな一歩でいい」ということでした。この仕組みも、下手くそなメモ一枚から始まっています。
この連載「AI社長のお困りごと相談」では、僕が実際に転げ回りながら作ってきた「ADHD気質の社長でも会社が回る仕組み」を、これから一つずつ、包み隠さずお話ししていきます。
次回は、「朝、決まった一言を打つだけで一日が回り出す”朝5分の仕組み”の作り方」を書く予定です。僕が朝、会社でやる”仕事”は、たった一文字を打つことだけ——その話をします。お楽しみに。
それではまた。
中山博之(ニタ)|AI経営インフラ
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