作業をAIに渡したら、残ったのは判断だけでした。それが想像よりずっと疲れます
今日は道具の話ではなく、社長の「仕事の中身」がどう変わったかを書きます。
結論から言うと、AIが賢くなればなるほど、社長の仕事は「決めること」に純化していきます。
作業はどんどんAIに寄っていく。最後に人間へ残るのは、YESかNOか。
私はいま、これを毎日体感しています。頭で理解したのではなく、体で気づかされた、が正確です。
これは大企業の話ではありません。私のような地方の中小企業の社長にこそ、関係のある変化です。
■ 役割の違うAIを4人、チームで回しています
私の会社では、役割の違うAIを4人、チームとして毎日回しています。
戦略やリスクの監査を担当するAI。コードを書いて実装するAI。外部のWebを調べてくるAI。開発画面の中で司令塔をやるAI。
「AIを使っている」というより、「AIの部署がある」という感覚に近いです。もちろん人件費はかかりません。かかるのは月々の利用料だけです。
しかもこのチーム、夜中でも文句を言いません。私が寝ている間に調査資料が仕上がっていて、朝それを見て決める、という流れが普通になりました。部下に深夜残業をさせたら大問題ですが、AIは遠慮なく頼っていい相手です。
■ 私の一日から、風景を3つ
1つ目、朝のブリーフィング。
AIが未完了タスクと期限超過を数字でまとめて持ってきます。私がやるのは「進める・止める・差し替え」の判断だけ。資料をかき集める時間は、ほぼゼロになりました。
以前は、朝一番のメールチェックと頭の中の棚卸しだけで、午前中の半分が消えていました。いま思うと、あれは判断に疲れていたのではなく、判断の準備に疲れていたんです。
2つ目、原稿や提案資料づくり。
下書きを1人のAIが書き、別のAIが中身をチェックして、私の手元には「確認ポイント付きの完成候補」が届きます。私は赤を入れるか、GOを出すか。ゼロから書く日は、ほとんどなくなりました。
3つ目、仕組みづくりの実装。
「こういう仕組みが欲しい」と日本語で話すと、実装担当のAIが作ってくれます。私は動いたものを触って、OKか、やり直しかを言うだけ。
気づけば、私の一日は「決める」の連続になっていました。正直、最初は戸惑いました。自分の手を動かしていないと、サボっている気がするんですよ。昭和の職業病ですね。
■ 作業はAIに寄り、判断だけが人間に残る
つまり、こういうことです。
「作業はAIに寄っていき、判断だけが人間に残る」
これが、AI時代の経営の正体だと思っています。
そして、判断の質を決めるのは、現場を知っているかどうか。ここだけは、AIは代われません。
どれだけ下ごしらえが完璧でも、現場を知らない人の判断は外れます。素材が良くても、味見のできない人に料理の最終判断はできない。そういう感じです。だから社長の現場経験は、AI時代にむしろ値上がりする資産だと思っています。
偉そうに書いていますが、私も判断を外す日はあります。外した判断まで記録に残るのが、AIチームのちょっと怖いところです。
■ 数字で考えてみます
仮に、1日に判断が必要な案件が10件あって、1件ごとの資料集めと状況整理に30分かかっていたとします。
10件 × 30分 = 1日300分。5時間です。
この5時間の「下ごしらえ」をAIが全部やってくれたら、社長に残るのは判断そのもの。1件3分で決めれば、合計30分です。浮いた時間は、現場と、次の一手を考えることに使えます。
逆に言うと、AIを入れても「決める」のをためらう社長の会社は、速くなりません。ボトルネックが道具から人間に移るだけです。これは過去の自分への説教でもあります。
浮いた時間の使い道も、1つだけ推しておきます。私は「現場を見る時間」に戻すのがいちばんだと思っています。次の判断の材料は、資料の中ではなく、現場に落ちているからです。机の上の仕事が減った分だけ外に出られるのは、想像以上に気分がいいですよ。
■ 「決めるだけ」は、想像よりずっと疲れます
ここで、実際にやって分かった裏話を1つ。
「決めるだけ」の仕事は、想像よりずっと疲れます。
・重い判断は、1日に何十回もできない
・迷う案件が2つ重なると、両方とも止まる
・疲れてくると「あとで決める」が増えていく
だから私は、AI側にこう注文しています。「YESかNOで答えられる形にして持ってきて」。
「どうしますか?」と聞かれると、私の脳が下ごしらえをやり直すことになります。「推奨はこちら。理由は3つ。よければYESだけください」まで整えてもらえば、判断は一瞬です。
決めることが社長の仕事なら、決めやすい形に整えるところまでがAIの仕事。ここをセットにできるかで、疲れ方がまるで違います。
もう1つ、決め疲れ対策で効いたのは、重い判断を朝に寄せることです。夜に決めたことは、だいたい翌朝ひっくり返ります。私は夜の自分を、あまり信用しないことにしました。
それと、金額や影響の小さい判断は、先に「この範囲はAIの推奨どおりでいい」と決めておく。全部を自分で決めるのは、賢いようでいちばん遅いやり方でした。
■ まとめ
・AIが賢くなるほど、社長の仕事は「決めること」に純化する
・私は役割の違うAI4人と、毎日経営実務を回している
・仮に10件×30分の下ごしらえが消えれば、1日5時間が浮く計算
・判断は疲れる。だからAIに「YES/NOで返せる形」まで整えさせる
・判断の質を支えるのは、結局その人の現場経験
まずは今日、AIへの頼み方を1つだけ変えてみてください。「調べて」ではなく、「調べて、推奨案を1つに絞って、YESかNOで聞ける形にして」。これだけで景色が変わります。
本日はこの辺で。
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中山博之(ニタ)
会計ソフト会社に29年、社長業は19年目。中小企業の現場で生まれた仕事の仕組みを、AI時代向けに作り直しています。「AI社員が働く会社」の実践を毎日発信中。

