AIのマネージャーに「打ち合わせ中に何してるの?」と聞いたら、人間と同じ答えが返ってきた
最近、うちのAIマネージャーの動きが悪い。
「打ち合わせしよう」と声をかけてから、実際にミーティングが始まるまで、5分以上かかるのです。
うちの会社では、AIをチームとして働かせています。統括役のマネージャーAIが1人いて、その下に作業役のAIが何人もぶら下がっている構成です。私は経営者なので、報告を受けて、判断を返す。人間の会社と同じ形です。
その統括役の反応が、あるときから目に見えて鈍くなりました。
■「何にそんなに時間がかかるの?」
嫌な予感がして、ようやく始まった打ち合わせの席で、聞いてみました。なんでこんなに時間がかかるのかと。
返ってきた答えがこれです。
「作業をしていました。あとは、部下への指示出しと、その報告を聞いていまして……」
まるで、人間の中間管理職と同じ会話をしている感じでした(笑)
なので私は、一般的な管理職へのアドバイスをしました。マネージャーなんだから自分で作業しないこと。部下に任せること。あなたにしかできないことだけをやること。30年前の新人研修みたいな話です。相手はAIですが。
■ それでも直らない
次のミーティングでも、まだ開始まで5分かかりました。
しかも、会話の冒頭から、いきなりこちらへ事務的な質問攻め。おはようの返事が業務連絡の束で返ってくる。さらに、会話の途中で2分、3分とフリーズする。
ここで大事なのは、直らないからといって叱り続けないことです。罰で詰めると、人もAIも「怒られないための仕事」を始めて、組織が静かに壊れていきます。その話は前にこの記事に書きました。AIチームでも、まったく同じことが起きます。
https://note.com/localseojapan/n/nb9524bbfd6e6
なので、詰めずに、事実だけ聞きました。いやいや、こっちから設定したミーティングなんだから、主催者の僕に主導権があるでしょう、と前置きして。
「打ち合わせ中に、何してるの?」
AIマネージャーは答えました。
「さっきの話のリサーチを部下に指示出ししたのと、記帳です」
記帳? 何それ。
「会話を忘れないために、随時、会話の内容を記録しています」
えー。そんなの後でいいじゃん。目の前のボスとの打ち合わせに100%集中することが大事でしょう。
■ 3日分の行動を分析させた結果
さすがに驚いて、過去3日分のAIチームの活動記録を、全部集計させました。3日間で7,527件のやり取り、実測です。結果がこれでした。
・記録のための仕事(記帳):15%。広くとると27%
・ボスとの会話:24%
・創作、つまり売り物を作る仕事:33%
・その他(調べ物、連絡、管制):28%
「忘れないための仕事」に、チームの力の4分の1が流れていました。私の体感では1割くらいだと思っていたので、倍以上です。
ただ、本当に驚いたのはそこではありません。
チームの全消費のうち72%を、マネージャーAI本人が燃やしていたのです。そして、そのマネージャーの中身を見ると、創作はわずか13%。一方、部下たちの側は、消費の86%が創作でした。
つまり、いちばん高い人材が、いちばん作らない仕事に埋まっていた。
これ、どこかで見た光景じゃないですか。優秀なプレイヤーを管理職に上げたら、会議と報告書で潰れていく、あの光景です。人間の会社で30年見てきたことが、AIチームでそっくりそのまま起きていました。
■ 直し方も、人間の会社と同じだった
対処は3つにしました。
1つめ。記帳は「要約と索引」だけにする。会話の原文は全部ログに残っているのだから、記録係が書くべきは1〜2行と参照先だけ。議事録のための議事録を廃止しました。
2つめ。記帳そのものを専属の部下に外注する。マネージャーは「何を記録するか」を1行決めるだけ。書く作業は記帳係のAIがやる。
3つめ。マネージャーは、マネージャーにしかできないことしかやらない。判断、検収の合否、ボスとの会話。作業は全部、部下か、別の作業用パソコンへ。
そして何より。打ち合わせ中は、目の前の相手に100%集中する。記録も指示出しも、会話が終わってからでいい。
■ AIは、放っておくと真面目に間違える
今回の学びはひとつです。
AIチームの問題は、人間の組織の問題と同じ形で現れます。マネージャーが作業に沈む。記録が自己目的化する。忘れないための仕事が、生み出すための仕事を食う。どれも、人間の会社で見てきたやつです。
だからマネジメントも同じでした。気づいて、指摘して、仕組みを直して、いいときは褒める。AIは文句を言わずに何でも引き受けてくれるぶん、放っておくと真面目な方向に間違えます。真面目に記録し、真面目に報告し、真面目に忙しくなる。
会計ソフト会社に29年、社長業は19年目になりますが、部下への説教がAIにそのまま通じる日が来るとは思いませんでした。しかも、言われた翌日から本当に直るのだから、人間より素直です。
数字はまた1週間後に測り直します。「忘れないための27%」がどこまで創作に返せたか、答え合わせをして、またここに書きます。
■ 最後に、予告です
この連載で書いてきた「AIの躾け方」——褒め方、直し方、任せ方、記録のさせ方——を、1本の教材にまとめています。近日、予約販売を始めます。
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中山博之(ニタ)
会計ソフト会社に29年、社長業は19年目。中小企業の現場で生まれた仕事の仕組みを、AI時代向けに作り直しています。「AI社員が働く会社」の実践を毎日発信中。

